介護施設における監視カメラは、転倒事故や徘徊の早期発見、出入口の安全管理など、利用者と職員双方を守るための重要な設備です。
一方で、介護施設は「生活の場」であり、カメラの運用を誤ると、利用者の尊厳や職員の働きやすさに影響を与える可能性があります。
本記事では、「見守り」としてカメラを活用しながら、プライバシーに配慮した運用方法(設置ルール権限保存説明)を、現場目線で整理します。
プライバシー配慮が必要になる理由
介護施設は、着替え休息排泄といった私的行為が日常的に行われる環境です。そのため、オフィスや店舗と同じ感覚で「監視」を目的にしたカメラ運用を行うと、強い不安や不信感につながりやすくなります。
カメラ導入を成功させる鍵は、目的を「不正監視」ではなく、安全を支える“見守り”として位置づけ、施設全体で運用ルールを共有することです。
導入事例①:夜間の徘徊対策と職員負担の軽減(特養)
■課題
- ・夜間、少人数体制で巡回が追いつかず、徘徊の見落としが発生
- ・事故が起きた際、状況確認ができず家族説明に時間がかかる
- ・常時監視の印象が強く、職員の心理的負担が懸念
■対策
- ・廊下共用部出入口のみを撮影対象に限定(居室内は原則設置なし)
- ・夜間はAI人物検知で廊下への出現を通知(必要時のみ確認)
- ・録音はオフ、録画映像の閲覧は管理者のみ
- ・保存期間は14日、事故発生時のみ必要期間を延長保存
■効果
徘徊の早期発見が可能になり、巡回負担が軽減。加えて、事故時の状況確認が迅速になり、ご家族への説明がスムーズになりました。日常的な「監視感」を避ける運用設計により、職員の心理的負担も抑えられました。
導入事例②:転倒原因の把握と再発防止(有料老人ホーム)
■課題
- ・同じ場所で転倒が続き、原因が特定できない
- ・巡回のタイミング外で起きる転倒の状況が不明
- ・個人の生活空間(居室)を映すことへの抵抗がある
■対策
- ・転倒リスクが高い「廊下の曲がり角」「トイレ前」など、共有部に限定して設置
- ・プライバシーマスクで映したくない範囲を黒塗り(居室ドアの内側など)
- ・普段は録画中心で運用し、映像確認は事故ヒヤリハット時のみ
■効果
転倒の前後の動きが確認でき、原因(段差歩行補助具の扱い動線の混雑など)が明確化。改善策(手すり位置変更床材の滑り対策動線見直し)につながり、転倒の再発が減少しました。
導入事例③:家族説明と施設の信頼向上(グループホーム)
■課題
- ・「どのような状況だったのか」を家族に説明しづらい
- ・利用者の尊厳に配慮しながら安全を確保したい
- ・カメラ導入に対して家族の不安がある
■対策
- ・導入前に家族へ「設置目的撮影範囲閲覧者保存期間」を書面で説明
- ・撮影は玄関廊下リビングなどの共用部のみ
- ・映像閲覧は「事故発生時」「申し出があった場合」など条件を明文化
- ・映像データの持ち出し禁止閲覧ログ管理をルール化
■効果
事前説明により家族の不安が軽減。事故時も映像をもとに状況を整理でき、説明の納得感が向上しました。「見守りを支える仕組み」として受け入れられ、施設への信頼向上につながりました。
運用ルールの基本設計(プライバシー配慮の要点)
■設置範囲の原則
- ・共用部(廊下玄関リビングなど)を優先し、私的空間は避ける
- ・トイレ内部浴室内部更衣室などは原則設置しない
- ・居室は「同意」「限定」「最小範囲」「必要時のみ確認」を徹底
■閲覧ルール(誰がいつ見るか)
- ・録画映像の閲覧者を管理者などに限定
- ・閲覧の条件を明文化(事故徘徊疑い家族申し出等)
- ・閲覧ログ(いつ誰が見たか)を残す運用が望ましい
■保存期間とデータ管理
- ・保存期間は必要最小限(例:7〜30日)
- ・事故発生時のみ必要期間の延長保存(ルール化)
- ・映像の持ち出し禁止管理端末のアクセス制御を徹底
■録音の扱い
- ・原則として録音はオフ(映像のみ)
- ・運用上必要な場合でも、目的範囲同意を明確にする
カメラ機能の選定ポイント(介護施設プライバシー配慮)
- ・プライバシーマスク:映したくない範囲を黒塗りぼかし
- ・音声録音オフ:会話の記録を避け心理的負担を軽減
- ・権限管理:閲覧者機能を役職ごとに制限
- ・夜間性能:夜間の廊下や薄暗い共用部でも鮮明に記録
- ・AI人物検知:徘徊兆候の早期把握(ただし過剰通知は調整)
- ・保存期間設定:自動上書きで不要な長期保存を防止
- ・遠隔確認:必要時のみ管理者が確認できる仕組み(アクセス制御前提)
利用者家族への説明で伝えるべき項目
プライバシー不安を減らすには「事前説明」が最重要です。説明は口頭だけでなく、書面にして残すことで誤解を防ぎやすくなります。
- ・設置の目的(安全確保事故防止徘徊対策など)
- ・撮影範囲(共用部中心/映さない場所の明示)
- ・映像を確認できる人(管理者など)
- ・映像を確認する条件(事故時申し出時など)
- ・保存期間と消去の仕組み
- ・個人情報の管理方法(持ち出し禁止アクセス制限)
まとめ
介護施設での監視カメラ運用は、事故防止や徘徊対策など安全面で大きな効果がある一方、プライバシーへの配慮が欠かせません。
ポイントは、「設置範囲を絞る」「閲覧者と閲覧条件を決める」「保存期間を最小限にする」「録音は原則オフ」「事前説明を丁寧に行う」の5点です。
カメラを「監視」ではなく「見守り」を支える仕組みとして位置づけ、利用者の尊厳と職員の働きやすさを守りながら、安心できる介護環境を整えていきましょう。
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