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大型倉庫は「広い・高い・暗所がある・動線が複雑」という条件が重なり、死角が生まれやすい現場です。今回ご紹介する導入事例は、延床15,000㎡の物流倉庫で、積み下ろしヤードから高天井エリア、入出荷ゲート、事務所連絡通路までを網羅し、“死角ゼロ”の運用を実現したケースです。調査→設計→施工→運用改善の流れと、成果につながった設計の勘所をまとめてみました。
フォークリフトの走行経路と人の導線、ラックの高さ・間口、昼夜の逆光ポイントを重ね合わせ、死角マップを作成。特にヤードは昼は逆光、夜は照度不足が課題だったため、広角+低照度に強い機種と、ピンポイントの望遠を併用。天井懸架は振動と熱に弱い箇所を避け、保守足場なしでレンズ清掃ができる位置に再配置しました。
全体把握用に8MPの魚眼・全方位で俯瞰、人物・ナンバー判別にはバレット/PTZを要所へ。侵入検知はAIのバーチャルフェンスでゾーン化し、深夜は感度を上げ、稼働時間帯はフォークリフトを誤検知しないチューニングを実施。配線はPoEでシンプル化し、レコーダーはRAID構成+30日保存。VMS側でプライバシーマスキング、イベント検索、スマホ通知を標準化しました。
アラートは「検知→録画タグ付け→メール/チャット通知→保安灯点灯」を自動連携。最初の1か月は誤検知を毎週レビューし、ゾーンと感度を微調整。庫内巡回のルーチンと、荷主立会い時のライブ共有手順をマニュアル化し、夜間の確認時間を平均64%短縮。荷役事故のヒヤリハット抽出にも映像を活用し、安全教育の質が向上しました。
死角ゼロは「台数の多さ」ではなく、「動線と光を読み解いた二層設計」と「運用の継続改善」で実現します。本事例では、侵入アラートの誤検知を大幅削減し、トラブル対応時間と事故リスクを同時に低減。倉庫の規模や業態が違っても、①調査の精度、②俯瞰+判別の役割分担、③運用レビューの仕組み化――この三点を押さえれば、再現性高く成果が出せます。